先日、国立新美術館で開催されている李禹煥(リ・ウファン)の展示会に出かけた。
直島にある李禹煥美術館で彼の作品に触れたことはあったが、今回は回顧展とあって、1960年代から現在までの作品を流れとして体感することができた。(彼の思想と実践のプロセスに触れるなかで改めて認識したのは、彼は実践する思想家だということ!)
素材を組み合わせて配置する「もの派」と呼ばれるアプローチは、思考実験のようにもみえる。関係を問うことをテーマとしている李禹煥の作品群からは、「置かれているもの」や「描かれたもの」のたしかな存在感とともに、それらが共鳴しあっているのが感じられる。見えないけれど感じられる世界へと誘われていくのだ。
キャンバス上の筆跡やタッチ、かすれ、飛び散る飛沫などを観ていると、そこに作家の集中力や呼吸が写し出されるような感じがして、そんなふうに作品に深く入ることができるのが至福だった。作品は作家のものだけれど、それを通して体験されることは、私のものなのだ、と再確認した。